ボルドーにもブルゴーニュにも「格付け」がある。だが片方は造り手に、もう片方は土地に付いている。同じ言葉で呼ぶせいで混ざりやすいこの違いを、1枚に整理した。

結論 — 知りたいことから読む
| 知りたいこと | 答え | そう言える理由 |
|---|---|---|
| 2つの格付けの違いは | 付く対象。ボルドーはシャトー(造り手)、ブルゴーニュは畑(土地) | ボルドーはシャトー名で、ブルゴーニュは畑名で格が決まる |
| 同じ名前のワインは1種類か | ボルドーはほぼ1つ。ブルゴーニュは造り手の数だけある | ブルゴーニュの畑は複数の所有者で分割されている |
| 格付けは変わるか | ボルドーは制度により変わる。ブルゴーニュはほとんど動かない | 図の下段には、右側(定期改定)が1つも無い |
| 「同じ特級なのに値段が違う」のは | ブルゴーニュ。造り手が違うから | 土地の格は同じでも、造り手は評価の対象外 |
| 「格付けなのに味が変わった」のは | ボルドー。造り手や畑の構成が変わることがある | 格はシャトーに付いており、中身の固定を保証しない |
| ラベルで見分けるには | シャトー名が主役ならボルドー型、畑名が主役ならブルゴーニュ型 | 名乗る単位がそのまま格の単位 |
| 迷ったら | ブルゴーニュは造り手を、ボルドーは年を見る | 変わりうる側が、それぞれ違う |
上の表で足りるなら、以下は読まなくてよい。
図の見方 — 縦が「何に付くか」、横が「どれだけ動くか」
- 縦軸=格が付く対象:上段が造り手(シャトー)、下段が土地(畑)
- 横軸=見直しの周期:左が事実上動かないもの、右が決まった年数で書き換わるもの
- 上段はボルドーの4制度:1855年格付け、グラーヴ格付け、サンテミリオン格付け、クリュ・ブルジョワ
- 下段はブルゴーニュの2階層:特級と1級。どちらも左側にしか無い
- 点の位置は当サイトの整理:制度の運用実態を、周期の長さで並べている
下段の右側が空いている。これが図のもう半分の主張だ。 土地は動かないので、土地に付いた格も動かない。
ボルドー — 格はシャトーに付く
一言で:名乗るのは造り手で、格もそこに付く。
- 格が付く対象:シャトー(造り手)。畑ではなく、生産者の名前に付く
- 代表的な制度:1855年格付け、グラーヴ格付け、サンテミリオン格付け、クリュ・ブルジョワ
- 見直し:制度により違う。 1855年は事実上固定、サンテミリオンは約10年ごと、クリュ・ブルジョワは5年ごと
- 同じ名前を名乗れるのは:原則1つ。 そのシャトーだけがその名前を使う
- 買うときに効くこと:同じシャトーでも年による差が大きい
- 格は年ごとの出来を保証しない。ヴィンテージ(年)が実質的な変数になる
ブルゴーニュ — 格は畑に付く
一言で:名乗るのは土地で、造り手は格の外にいる。
- 格が付く対象:畑(土地)。区画そのものに格が付いている
- 代表的な制度:特級(グラン・クリュ)と1級(プルミエ・クリュ)の2階層
- 見直し:ほとんど動かないとされる。土地の評価なので、書き換える理由が生じにくい
- 同じ名前を名乗れるのは:複数。 1つの特級畑を数十の造り手が分け合う例もある
- 買うときに効くこと:同じ畑名でも造り手で中身が変わる
- ラベルの畑名は「どの土地か」しか語らない。造り手名が実質的な変数になる
読者にとって、何が変わるのか
制度の話は、売り場では次の3点に落ちる。
| 場面 | ボルドー型(造り手に付く) | ブルゴーニュ型(土地に付く) |
|---|---|---|
| 同じ名前を見つけたとき | 中身はほぼ同じ。 違うのは年 | 中身は違う。 造り手を確かめる |
| 値段の幅が大きいとき | 年の差を疑う | 造り手の差を疑う |
| 贈り物として選ぶとき | 格付けの級が伝わりやすい | 畑の名前が伝わりやすい |
- 「格付け上位なら間違いない」は、ボルドー型でしか成り立たない。 ブルゴーニュ型では造り手が抜けている
- 逆に、ブルゴーニュ型は当たりを引いたときの再現性が高い。 同じ造り手の同じ畑を選び直せる
- どちらが優れているという話ではない。 変わりうる場所が違うだけ
補足 — なぜ、付く対象が分かれたのか
同じフランスで制度が分かれたのは、ワインの売り方が違ったからだと読める。
- ボルドーは輸出の産地だったとされる。大西洋に面し、商人が海外へ売る構造の中で、 買い手が指名できる単位=造り手の名前が価値を持った。1855年の格付けも、当時の取引価格を並べたものだった
- ブルゴーニュは内陸で、修道院が畑を管理していたとされる。区画ごとの出来の差が長い時間をかけて記録され、 その区画の単位がそのまま制度になった
- 売る相手が違えば、名乗る単位も変わる。 商人に売るなら造り手の名前、土地の差を記録するなら畑の名前
この違いは、最上級の銘柄がなぜ高いのかの説明にもそのまま効く。 ボルドーの最上級は「そのシャトーだから」高く、ブルゴーニュの最上級は「その畑だから」高い。 根拠の置き場所が違う。
まとめ — 3ステップで読む
- ラベルの主役を見る:シャトー名が大きければボルドー型、畑名が大きければブルゴーニュ型
- 変わりうる側を確かめる:ボルドー型なら年、ブルゴーニュ型なら造り手
- 格付けの級は、そのどちらを保証していないかを思い出す:級は出発点であって、結論ではない
ボルドーの4制度は ボルドーは、左岸か右岸かで品種が変わる に、 ブルゴーニュの4階層は ブルゴーニュは、畑の階層で値段が決まる に、 フランス全体での位置は フランスワインは、産地名で品種が決まる にまとめている。
次回は、この構造の上に個別の銘柄を載せる。最上級と呼ばれるワインは、どちらの根拠で最上級なのか。


